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情報番号 1902 ヘルプ

タイトル: アジアの開発途上国の拠点大学/学校における「災害看護学」教育導入の支援
副題:
著者: 上村 朋子
所属: 日本赤十字九州国際看護大学
データ存在URL:

http://jrckicn.ac.jp

所在情報:

課題責任者 上村朋子(日本赤十字九州国際看護大学)にご連絡ください。

データファイル: ベトナム災害看護学導入ppt.pdf
ベトナム災害看護学導入ppt.pdf ( 2M )
ベトナム災害看護学導入概要.pdf
ベトナム災害看護学導入概要.pdf ( 248K )
対象国: アジア-ベトナム
データの言語: 日本語
キーワード: 災害看護学、ベトナム、看護教育
要旨:

1.事業の背景
 災害発生時に看護職が大きな役割を果たし得ることは今や災害救援における基本的了解事項となりつつある。看護職は、保健医療専門家の中で、最も数が多く、また、普段から患者・住民に最も近い存在だからである。わが国の「災害看護学」は、1995年の阪神・淡路大震災後に発展してきたもので、看護学領域の中でも新しい分野であるが、急速にこの分野についての知識を蓄積し教育体制を整えてきた実績が、他の国や地域に同様の変化を促すために有用であると考えられる。
 世界の自然災害に目を向けると、その7割は開発途上国に集中しており、被災者の実に98%が途上国の住人である。これを地域別に見ると、その4割が人口過密なアジアで発生しているため、被災者の89%はアジアの住人という事実になっている(世界災害報告、2008)。しかしながら、開発途上国では、未だ「災害看護学」という用語すらなく、その教育もほとんど行われていない状況であり、災害看護学の知識の蓄積と教育の普及を迅速に進めることが必要である。近年多発する大規模災害に対処するには、この分野で実績を持つわが国が、アジア諸国にそのノウハウを伝達し、人材育成のシステム作りを支援することが、きわめて効果的な国際貢献になると考えられる。
 今回の対象国としては、災害看護学教育のニーズが高く、我が国との関係が今後一層深まると予測されるベトナム社会主義共和国を選んだ。ベトナムは、自然災害被害の世界ワースト10内にあり、過去10年の統計では、洪水・台風・土石流など多様な自然災害による年平均損害額が国内総生産の1.5%に相当している。加えて、道路や交通ルールなど社会インフラの整備が追いつかないまま、急激な経済開発を進めてきたためか、交通事故が10大死因中第8位(WHO、2006)となっている。このほか、産業発展に伴う産業災害・労働災害問題の深刻化も指摘されており、人為的災害も含め、多様な「健康の危機」対策のニーズが増大している。従って、災害看護学教育のニーズは高いと考えられるが、現在、ベトナムの看護教育課程には災害看護学が導入されていない(NURISING IN THE WORLD、2008)。日本はベトナムに対し、1970年代から医療支援を開始しているが、看護教育への関与はほとんど行われていない。しかし、2009年12月に経済連携協定が発効し、今後、わが国との関係がいっそう深まると予測される。
 
2.目的 
 わが国が開発してきた災害看護学のカリキュラム・教材・教授法のノウハウを、近隣アジアの災害多発国の拠点大学/学校に伝達・教授することにより、現地での災害看護学教育導入を進め、現地人材による継続的発展へと導くことを目的とする。

3.活動
 本年度の活動目標を大きく2つに分け、以下、目標に沿って、活動内容を述べる。
活動目標1:いずれかの大学との間に協働関係を構築し、モデル校としての活動を進める体制を整える。
活動内容
(1)教育省、保健省およびこれまでベトナム開発に関与してきた日本人諸氏から現地の看護教育に関する情報を収集し、拠点大学候補としてナムディン看護大学を選んだ。平成21(2009)年7月、本学学長が同大学を訪問し、関係者との意見交換、活動趣旨の説明を行い、協働してベトナムの看護教育に災害看護学を導入することに合意した。
(2)モデル校となるナムディン看護大学の体制作りにおいて指導的役割を担う人々が、災害看護よび看護基礎教育の知識獲得の機会を持つために、二つの日本訪問・研修を実施した。一つは、(3)に述べるH.E.L.P(赤十字の人道援助活動研修)への参加、もう一つは、同年12月のナムディン看護大学学長・教員1名の本学訪問である。後者には、本学での講義・意見交換の他、「人と防災未来センター(神戸)」および赤十字関連医療施設や国際的活動を広げている医療機器メーカーの視察が含まれる。

活動目標2:ベトナムの中核的人材が、災害看護学教育に必要な知識・技術を修得する。
活動内容
(3)災害看護学教育の中核的人材の育成のために、平成21(2009)年8月31日~9月18日、本学で開催したH.E.L.P. in JAPAN 2009に、ナムディン看護大学、ハイズーン医療技術大学から看護教員各1名が参加し、人道援助活動の知識、実践のあり方とともに災害看護学教育の基盤となる知識を修得した。
(4)平成22(2010)年1月、ベトナム北部の8大学の看護教員20名を対象に、ナムディン看護大学でワークショップを開催した。本学教員が講義・演習を行い、日本で研修を受けたベトナムの看護教員が現地の災害状況を発表した。

4.成果  
(1)成果
 成果は、ナムディン看護大学との協働関係を構築し、モデル校としての体制を整えてもらい、8大学の教員を対象としたワークショップ開催まで至ったことである。ナムディン看護大学で開催したワークショップでは、日本を視察したナムディン看護大学学長、日本でのH.E.L.P.研修に参加した教員がリーダーシップを発揮し、参加者の学習動機を大いに向上させた。このように、ナムディン大学の貢献は大きかったが、このような協働体制は、本学学長ら日本側教員のベトナム訪問、ナムディン大学側の指導的立場にある教員の日本招聘などの相互交流活動を通じて作られたものである。
 ナムディン大学でのワークショップに参加した総勢20名の教員は災害看護学教育の導入の意義や必要性を理解し、そのために必要なリーダーシップ、知識・技術を修得した。参加者同士の交流を通じて、8大学に所属する参加者の間に人間関係が築かれ、災害看護学導入に向けて8つの大学の間にネットワークが形成される基盤が作られた。今後、参加者が中心となった協働作業によりカリキュラムや教材が開発されると期待される。さらに、参加者は、看護職だけでなく、災害看護学を医療関係者全体にも広がるように計画したいという意思を示していることから、今後も適切な支援を得ることができれば、国内の諸教育機関に導入するためのガイドラインを作成することができ、一層大きな成果が生まれると考える。
(2)成果物
・ベトナムへの訪問記録およびナムディン看護大学と本学との会議録
・HELPをはじめとする日本での研修に参加したベトナムの看護系大学教員による研修報告書
・ベトナムの教員を対象としたモデル・コアカリキュラムとテキスト
・ベトナムの教員を対象とした災害看護学教育セミナー/ワークショップの報告書
・ベトナムの看護基礎教育の現状に関する報告書